給与明細の「ベースアップ等手当」とは?|理学療法士が知っておきたい賃上げの仕組み

PTの仕事・専門性

給与明細を見て、「ベースアップ等手当」という項目に気づいたことはありませんか?

私の明細にも、この名前の手当が付いています。恥ずかしながら、最初は「なんだろうこれ」くらいにしか思っていませんでした。

でも調べてみると、これは国が医療・介護職の賃上げのために作った仕組みから来ているお金でした。しかも2026年6月に、訪問看護・訪問リハビリにとって大きな制度変更があったばかりなのです。

この記事では、リハビリ職が知っておきたい「賃上げの仕組み」を整理して解説します。

📌 この記事で分かること

  • 「ベースアップ等手当」の正体
  • よく混同される2つの制度(医療保険と介護保険)の違い
  • 2026年6月から訪問看護・訪問リハが処遇改善加算の対象になった話
  • 自分が対象かどうかを確認する方法

※本記事は2026年9月時点の情報です。制度の要件や金額は改定のたびに変わり、また配分の方法は事業所によって異なります。最新かつ正確な内容は厚生労働省の公式情報や、ご自身の勤務先でご確認ください。

まず結論:賃上げの制度は「2つ」ある

医療保険のベースアップ評価料と、介護保険の処遇改善加算。
この2つは別の制度です。どちらが自分に関係するかは、勤務先の種類で決まります。

ここが混同されやすいポイントです。まずは全体像を表で整理しましょう。

  ベースアップ評価料 処遇改善加算
どの保険 医療保険
(診療報酬・訪問看護療養費)
介護保険
(介護報酬)
いつから 2024年度に新設 以前からあり
(訪問看護・訪問リハは2026年6月から)
主な職場 病院・クリニック
訪問看護ステーション
介護施設・訪問系サービス

なお、訪問リハビリのように医療保険と介護保険の両方が関わる職場もあります。そのあたりの前提は診療報酬・介護報酬の改定で給料はどう変わる?で整理しています。

①ベースアップ評価料(医療保険)|リハ職も対象です

2024年度(令和6年度)の診療報酬改定で新設された仕組みです。医療機関で働く人の賃上げの財源として作られました。

リハビリ職も対象に含まれる

ここが大事なところです。対象となるのは医師・歯科医師を除く医療従事者で、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士もしっかり含まれます。

「看護師さんのための制度でしょ?」と思っている人が意外と多いのですが、そうではありません。

評価料にはいくつか種類がある

  • 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)(Ⅱ)
  • 入院ベースアップ評価料
  • 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)(Ⅱ) ← 訪問看護ステーション勤務はここ
  • 調剤ベースアップ評価料 ほか

使い道が限定されているのがポイント

この評価料で事業所が得た収入は、職員の賃金改善にしか使えません。

⚠ ここを知っておくと強い:具体的には「基本給または毎月の手当の引き上げ」と、それに伴う賞与・残業代などの増加分に充てることとされています。つまり一時的なボーナスではなく、毎月の給与そのものを底上げするためのお金。「うちは算定しているのに給与が変わらない」と感じたら、確認してみる価値があります。

②処遇改善加算(介護保険)|2026年6月に大きく変わった

こちらは介護保険の制度です。そしてリハビリ職にとって、つい最近大きな変化がありました。

これまで訪問看護・訪問リハは「対象外」だった

意外に思われるかもしれませんが、訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援は、長らく処遇改善加算の対象外でした。介護職員が配置されていないサービスという位置づけだったためです。

2026年6月1日から対象に加わった

2026年6月1日から、訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援が
介護職員等処遇改善加算の対象サービスに新たに追加されました。

加算率は次のとおりです。

サービス 加算率
訪問看護・介護予防訪問看護 1.8%
訪問リハビリテーション・介護予防訪問リハ 1.5%
居宅介護支援・介護予防支援 2.1%

算定するには、キャリアパス要件や職場環境等要件などを満たす必要があります(または令和8年度の特例要件)。つまり、算定するかどうかは事業所次第ということです。

💡 補足:加算で得た収入をどの職種にどう配分するかは、事業所の運用によります。「対象サービスになった=自動的に自分の給与が上がる」わけではありません。詳しくはご自身の事業所や公式情報でご確認ください。

【実体験】私の給与明細にはこう書かれている

私は訪問看護ステーションで訪問リハビリに従事しています。自分の給与明細を確認したところ、「ベースアップ等手当」という名称で項目が立っていました。

正直に言うと、以前は明細のこの行をちゃんと見ていませんでした。「何かの手当が付いてるな」くらいの認識です。

でも調べてみて、考えが変わりました。これは事業所が善意で出してくれているお小遣いではなく、国の制度に裏づけられた「賃上げのための財源」から来ているお金なのだと分かったからです。

制度を知っているかどうかで、明細の見え方はまったく変わります。

自分が対象か確認する3つの方法

① 給与明細の項目名を見る

「ベースアップ等手当」「処遇改善手当」など、それらしい名称の項目がないか確認してみましょう。名称は事業所によって違いますが、手がかりにはなります。

② 職場の掲示やお知らせを確認する

加算を算定している事業所は、その旨を職員に周知しているはずです。就業規則や給与規程に記載がある場合もあります。

③ 管理者・事務に直接聞く

いちばん確実です。「うちはベースアップ評価料(または処遇改善加算)を算定していますか?」と聞いてみましょう。

聞きにくいと感じるかもしれませんが、これは職員の賃金のために作られた制度です。知ろうとすることは、まったくおかしなことではありません。

転職を考えている人へ|面接で確認できるポイント

ここは転職活動にも直結します。

加算や評価料は算定している事業所と、していない事業所があります。要件を満たす必要があり、事務の手間もかかるからです。

つまり同じような求人に見えても、賃上げの仕組みが入っているかどうかで待遇に差が出るということ。

⚠ 面接で聞いてみる価値あり:「ベースアップ評価料や処遇改善加算は算定されていますか?」
提示された基本給だけでは見えない部分を確認できます。私は面接で副業の可否や研修費の有無を必ず聞くようにしていますが、この項目も同じくらい実利のある質問です。

まとめ

賃上げの制度は、医療保険の「ベースアップ評価料」と介護保険の「処遇改善加算」の2つ。リハビリ職も対象に含まれる。2026年6月からは訪問看護・訪問リハも処遇改善加算の対象になった。まずは自分の給与明細と、職場が算定しているかを確認してみよう。

給与明細の見慣れない項目も、仕組みが分かると意味が変わってきます。リハビリ職の給料が上がりにくい構造についてはこちらの記事で書きましたが、こうした制度はその流れを変えようとする動きの一つでもあります。

制度を知り、自分の待遇に関心を持つこと。それが、長く働き続けるための小さな一歩になるはずです。

【参考にした情報】
・厚生労働省「令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について」
・厚生労働省「介護職員等処遇改善加算」関連資料(令和8年度報酬改定)
※制度の詳細・最新情報は必ず公式情報をご確認ください。

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